■2008年度第3回研究会報告

[日時] 2009年1月19日(月) 18:00-21:00
[会場] 東洋文庫研究部イスラーム地域研究資料室
[テーマ] 「Furughistanとペルシア語「財務・簿記術指南書」」
[報告者] 渡部良子(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所非常勤研究員)

 本発表ではオスマン朝以前の「イラン式簿記術」の知識の体系とその伝承に関する史料紹介および研究動向が説明された。

 はじめに19世紀イランで執筆された「財務・簿記術指南書」のイーラージュ・アフシャールによる解説付きの校訂本 Mahdi b. Baqir Furugh-i Isfahani, Furughistan : Danishnama-i Fann-i Istifa va Siyaq, ed. by Iraj Afshar, Tihran, 1378kh (2000) が紹介された後、11世紀から17世紀までにペルシア語で編纂された「財務・簿記術指南書」に関する史料解題が行われた。

 発表者は、イランにおけるスィヤークとは会計用数字書法・文字にとどまらず、財務文書・帳簿の知識までを含むのではないかという 重要な提言とともに、スィヤークが近代に入ってから財務技術の総体を表わす用語になっていったことも付言した。

 今後、ペルシア語「財務・簿記術指南書」とオスマン文書史料を比較検討することにより、「イラン式簿記述」がどのような形でオス マン朝に継承されたのか明らかになると思われる。余談であるが、現在トルコでスィヤークはDivan Rakamlariと呼ばれる。いつごろ スィヤークの名称が変化したのか気になるところである。

(文責:齋藤久美子/慶應義塾大学非常勤講師)
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