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■トルコ共和国首相府オスマン文書館における史料調査 [期間] 2012年9月3日から9月13日[国名] トルコ共和国 [出張者] 髙松 洋一（東京外国語大学・アジア・アフリカ言語文化研究所・准教授） [概要] イスタンブルのトルコ共和国首相府オスマン文書館において簿記術に関係する史料調査を行なった。 史料の実物を手に取って調査を行なったのはジェヴデト（Cevdet）分類の財務（Maliye）関連文書 およびワクフ(Evkaf)関連文書群で、主に国家財政に関する会計簿とワクフ会計に関する帳簿を調査し、 イラン式簿記術の実践の実例を収集することができた。 またトルコ共和国首相府オスマン文書館には近年、イスタンブルを除くイスラーム法廷記録簿が 移管され、実物は実見できないものの、デジタル画像による閲覧が可能となった。今回はブルサ、 エディルネの2都市を中心とするイスラーム法廷記録簿の調査を行なった。イスラーム法廷記録簿の 簿記術の史料というと財務関係の帳簿がまず念頭に浮かぶが、イスラーム法廷記録簿の中にも特に 遺産相続に関する記録が数多く含まれていることを確認した。今後は国家の財政部門が残した帳簿に 限らず、カーディーが残したこれらの史料についても、簿記術の展開の観点から調査を進めていくこ との必要性を痛感した。 さらにトルコ共和国首相府オスマン文書館では、トプカプ宮殿博物館文書館に収蔵されている帳簿 群（TSMA.D分類）のデジタル画像の閲覧が可能になったので、これも調査した。簿記術と関連の深い ものとしては、宮廷財政に関する帳簿群が膨大に存在することが確認された。トプカプ宮殿博物館文 書館は利用許可申請の取得が困難であり、長らく整理のために閉鎖されていたこともあって、所蔵資料 の活用はこれまで不十分であったが、これらの帳簿群がオスマン朝の宮廷の歴史を書き換えるだけの 質・量を誇ることを確認し、さらにその活用が、先行する王朝との比較の観点からも、今後の帳簿研究 に新らたな可能性を見いだす契機になることは確実だと思われる。 トルコ共和国首相府オスマン文書館は、来年早々にイスタンブルのキャウトハーネ(Kagithane)地区 に移転が決まっており、移転に伴う長期の閉館、利用停止が予測される。今回、文書館の移転前にこの ような史料調査の機会を得たことを喜びたい。 |