■エジプト・アラブ共和国、トルコ共和国における資料調査

[期間] 2009年1月23日(金)〜2月25日(水)
[国名] エジプト・アラブ共和国、トルコ共和国
[出張者]熊倉和歌子(お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科博士課程)

[概要]
今回出張では、エジプト及びトルコの文書館に所蔵されているオスマン朝期に作成された土地台帳を調査した。またエジプト国立文書館や写本室が移転したばかりのエジプト国立図書館新館の近況についても調査を行なった。

 今回の主要な調査は、エジプト国立文書館(Dar al-Watha'iq al-Qawmiya)に所蔵されている『軍事台帳』全14冊の調査と複写であった。この台帳は16世紀オスマン朝治下のエジプトで編纂されたもので、非国有地として確定された私有地やワクフ地を登記するための台帳であった。この台帳の特異な点は、その土地のマムルーク朝期の状態についての情報が詳細に記されている点である。報告者は以前からこの台帳の情報を集めていたが、今回の調査ですべての台帳の情報を得ることができ、必要部分を複写することができた点で非常に有意義な調査となった。

 さて、国立文書館の利用に際して、その規定が判然としないため利用しにくいという声をよく耳にする。ここではそうした利用上の障害が少しでもなくなるよう、今回得た情報を書き留めておきたい。

 まず当館利用の際に提示する閲覧許可証についてであるが、閲覧許可証を既得していても発行年月日が2,3年以上前だと再発行を要求されるので注意されたい。継続的な利用者は多少発行年が古くても黙認される傾向があるが(報告者は2005年発行の許可証を未だに利用している)、断続的利用となるとこまめに更新する方が安全。次に利用するのがいつになるかわからないという場合は、帰国前に再発行申請をすることをお勧めする。(閲覧許可証の発行には通常4〜6週間かかる)そうはいっても、前回再発行申請をしないで帰国してしまった場合は、閲覧や複写を断られても、くじけずに「研究題目は以前から変わっていない」ということを熱心に主張してほしい。(基本的には研究題目が変わらなければ閲覧許可証は再発行する必要はない)閲覧希望者の閲覧許可証を見て閲覧を許可するか否かの判断は、閲覧室に座っている館員の個人的な判断に委ねられているため、経緯をしっかり話せば理解を示してくれるはずだ。

 同館には複写サービスがあり、これを利用する研究者も多いと思う。しかしこれにも規定があり、史料一件につき全体の三分の一まで、かつ閲覧申請書に記入する研究題目一件につき100枚までと決められている。複写した枚数は館員がノートに書き留めている。また閲覧許可証の発行年が古いと申請を受け付けてくれないことがある。(これも説得次第で道が開ける可能性はある)

 現在当館はデータ化に向けて所蔵資料の再整理、修復を行なっており、調査に赴いた際は目当ての『軍事台帳』は修復中のため閲覧できないと言われた。しかし短期間の滞在であることを伝え懇願したところ、便宜をはかってくれることになった。しばらくはこのような状態が続くようなので、文書館を利用される方は注意が必要である。

 [文書館の開館時間]
 月曜日〜木曜日   9:00−18:00 (夏季は9:00−19:00)
 土曜日(閲覧のみ) 9:00−15:00
 金曜日 閉館
 *土曜日は閲覧のみ可能。申請はできない。 *閉館時間の30分前には退館を求められる。

 今回の調査では、写本室が移転したばかりのエジプト国立図書館新館(Dar al-Kutub)も調査し、アラビア語及びトルコ語写本の調査、複写を行なった。国立図書館新館はバーブ・アルハルクのイスラーム芸術博物館を改装した建物内に同博物館と併設されている。外見は伝統的なイスラーム建築のスタイルだが内部は近代的な内装で、そのギャップに驚かされる。ここで調査をする際は、受付でパスポートと荷物を預け、受付簿に必要事項を記入するだけで入館することができる。マイクロフィルムを閲覧する順序は、まず検索用PCで目当てのマイクロの請求番号など申請に必要な情報を検索し、閲覧申請書に記入する。それを近くにいる館員に渡すとマイクロを持ってきてくれるので、その館員と共に隣の閲覧室に入り閲覧する。館員の対応はとても親切で、分からないことをたずねると丁寧に教えてくれた。

 複写料金は、A4紙焼き:学生0.6LE、一般1LE、A3紙焼き:学生0.75LE、一般2LE、CD(一枚あたり):学生1LE、一般2LE。今回CDでの複写を請求したが、指定日の2日後にちゃんと出来上がっていた。ただし聞くところによると、指定日に出来ていないこともあるので注意が必要のようだ。

 PCでの検索が容易になったことや、マイクロリーダーが新品であること、またCD複写が安価でできるようになったことなど、利用者にとっては以前に比べて使いやすい環境になったといえるだろう。是非より多くの研究者に利用され、よりよい図書館になっていって欲しいものである。

 [国立図書館開館時間]
 日曜日〜木曜日  9:00−16:00
 *金・土は閉館日

海外調査・報告のトップに戻る